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 改札近くで待っているとシルバーのスーツケースをゴロゴロ引いた見覚えのある男性が改札を抜けてこちらに向かって来た。丈晴さんだ。太眉に顎髭を蓄えた少し厳つい顔立ちにサングラスを掛けている。黒いワイシャツに黒いスーツ。オカルトグッズを取り扱う企業の社長らしい、怪しさ満点の風貌だ。すれ違う人々が一度振り返り、前を向き、また振り返り、丈晴さんの向かう先にいる二郎君に気が付き、疑いが確信に変わったという表情をする。こちらを指差す人もいる。二郎君が小さく頭を下げた。 「遠い所からお疲れ様です」 「いや、二時間ぐらいで着いちゃうから。大したことはないよ」その見た目に似つかわしくない優しい口調。「松下君とはこうして直接会うのは初めてかな」 「改めて、初めまして」 「初めまして。よろしくね」 「よろしくお願いします」
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