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この一言で何を察したのか、白波さんが引き下がった。二郎君も俺に向かって小さく頷く。何なんだ。
「東北インを予約したんだけど、松下君案内してもらえるかな」
「歩くんですか。1キロ以上ありますよ」
「松下君が嫌じゃなければ」
「俺はいいですけど」
白波さんと二郎君が車で走り去っていった。丈晴さんは持っている紙袋から縦長の小袋を出すと俺に差し出した。
「食べる?」
「鐘崎」
「好きじゃなかったかな」
「いえ、いただきます」
実際、鐘崎のかまぼこも美味い。笹かまぼこを咥えながら歩き出す。サングラスを外した丈晴さんはジトッとした目つきの三白眼。従兄弟ともなると山田家の顔立ちとは似ても似つかない。
「松下君はどこの笹かまが好きなの」
「白謙です」
「今度はそっちも買ってみるよ」
「俺に話すことって何ですか」
「急かすね」丈晴さんが笹かまぼこを囓って笑う。「まあいいか」
川に沿った道をのんびり歩く。蔵のような古い家屋を再現した店舗がいくつか集まっている。
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