『幼馴染みの俊哉の家に行く場合 ①」

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『幼馴染みの俊哉の家に行く場合 ①」

「先輩っ、放してよっ」 「いやだっ。放したら幸樹は行っちまうんだろう。」 俺の足元にすがりついて、俺を行かせまいとしているのは、俺のカッコいい?彼氏の相沢貴明先輩だ。 いやだ、いやだと縋り付いて離そうとしない。 もう、参ったなぁ~。 かれこれ一時間はこの状態で、俺はほとほと手を焼いていた。 事は先日郵送されてきた一枚のハガキに端を発する。 ++ ++ 「ーー同窓会のご案内?」 俺はポストに入っていたハガキを見て不思議に思った。 実家を出て、大学に入ったが、家族はうすうす俺の性癖に感づいてたようで、無理に帰ってこなくていい、と目も合わせずに俺を送り出してくれた。 それについては、色々思うところもあるけれど、あの田舎の町にずっと住むことは苦痛だったし、自分をずっと偽って暮らす事に無理もあったから、家族が理解とは違うけれど、ある程度僕の事情を分かっていることはとても有難いことだと思った。 そんな風に俺は半ば地元を捨ててきた人間なので、同窓会という郷愁を誘う連絡が来ることは想像だにしてなかったのでびっくりしたんだ。 「宛名・・・合ってる。住所・・・合ってる。じゃやっぱり俺宛てなんだ・・・。ん?」 ああ、納得。 ハガキを送って寄越したのは、俺の幼馴染みの俊哉だった。 あいつが幹事なら俺にも連絡してくるか。 それに、よくよくハガキを読んでみると、同窓会とはいっても地元で行われるものではなく、都内に出てきている同郷のみなさん、親睦を深めませんか?という趣旨の飲み会の誘いみたいだ。 体よく「同窓会」なんて言ってるけど、都内に出てきている人間はそれ程多くないし、もしかしたら俊樹と俺+2~3人ぐらいしか集まらないかもしれない。 それでも、まぁ、地元を離れた人間ってのは何かしら地元に複雑な思いを抱えていることも多く、そんな同郷の友達に会っておしゃべりするのは楽しいかもしれない、と思った。
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