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「そう言えば、どうして先輩は宮内さんの家に来たの?」
ふかふかのタオルで身体を拭いて、洗濯したてのパジャマに着替えたところで、俺はあんなタイミングで現れた先輩に疑問をぶつけた。
「ああ、保科さんから連絡が来てな。宮内ってやつの家にお前を向かわせたけど、出てこなかった場合の事とか、あいつの携帯番号とか諸々伝えわすれたから俺が直接行けって言われてな。」
なるほど、だから宮内さんの家が分かったのか。
「で、慌てて行ってみたら玄関の鍵は開けっ放しだし、何だか焦ったお前の声やら宮内の声やら聞こえてきてな。」
一気に踏み込んで殴ってやろうかと思ったんだけど、俺の様子が落ち着いてたし、宮内さんの洋服が水浸しだったのを見て、きっと俺が抵抗したんだろうな、って思ったらしい。
「ま、お前の上に、もしアイツが乗っかって組み敷かれてたのを実際に見ていたらマズかっただろうけどな。」
ギリギリ我慢した。
顔じゅうにキスをしながら話す先輩は俺を片時も離さない。
ベッドの上で話していたからか、このままもう一回って事になりかねない、と俺は先輩から距離を取ろうとした。
「なんで離れるんだよ、幸樹ぃ。」
不貞腐れてさらに俺を胸元に抱き込む先輩はちょっと可愛い。
「ま、コレでお前もバイトなんか嫌になっただろ。」
「え?そんな事ないよ。俺、もっとバイトしてみたいよ。」
「だめっ!もう終わりっ、バイトはやっぱり許さないっ!」
ああ、また先輩に反対されちゃった。
せっかくバイトにも慣れてきていて、短期じゃなくて正規で雇ってもらおうと思ってたのにっ。
「ええ~もう大丈夫だって。今回はたまたま宮内さんの失恋にぶち当たっちゃっただけだって。普段ならそんな事ないしっ。」
「偶然でも何でもダメだって。俺の目の届く範囲に居ろって事だろっ。」
先輩はダメ、ダメっていいながら俺にキスの雨をさらに降らせる。
ええっ、これじゃいよいよ家から出してもらえなくなっちゃうかも。
俺は内心、恐々としながら、何とかこの先、先輩の考えを変えさせることは出来ないか、とそればかり考える。
ああっ、このままずぅっと部屋に監禁されちゃったらどうしようっ。
俺、まだまだやりたいことあるし、大学だってちゃんと卒業したいしっ。
来月には二十歳になるから、お酒だって飲みたいしっ。
ううむ。
ちょっと作戦を練らないと!!
先輩のパジャマの袖をぎゅぅっと握り締めながら、俺は今後について思いを巡らせた。
つづく!
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