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「どうした?何、誰から?」
普段DMぐらいしか届かない俺が、明らかに俺宛てのハガキを持って立ちすくんでいる姿を見て、先輩は眉を寄せた。
「同窓会?ふーん。でも行かないだろ、幸樹。」
背後から手を伸ばして、ハガキをひょいと取り上げた先輩は、そのままゴミ箱にハガキを捨てようとした。
「あ!あ!待ってよ!!俺、行かないなんて言ってないじゃん。」
今の今まで迷っていたのに、勝手に決められると癪にさわる。
「何で?幸樹、地元にいい思い出ないって言ってただろ。それなら行く必要もないだろ。」
先輩には、俺が上京してきた背景も話していたので、地元にはいい思い出もないし、家族にもそれ程会いたい気持ちもないと伝えてある。
「それは、地元でやるやつじゃないんだって!こっちでやるやつ!」
「は?」
先輩は俺の言葉を聞いて一瞬目を見開くと、途端に大声で反対しだした。
「行くなっ。絶対にっ、行くなっ。」
ええ~、何でこんなに反対するわけ?
こっちでやるなら地元に帰る訳じゃないから、その日に帰ってくるし。
参加人数も少ないから、若干人見知りだと思う俺にはちょうどいいと思うんだけど。
何より、俺が会いたいな、って思うやつが来る。
地元に友達はいるけど、それは表面上の関係でしかなくて。
もし、ハガキを送ってきたのが俊哉じゃなかったら、俺は参加しないって即決しただろうけど。
今回の幹事は幼馴染みの俊哉だと分かっていたから。
あいつが来るなら久しぶりに会って話したい。
そんな願望が出てきた。
「どうして参加しちゃいけないって言うんだよ。場所だって・・・そんな遠くないしすぐ帰ってこれる場所じゃん。」
「あのなぁ・・・幸樹、世の中の恋人の危機っていうのはどちらかの浮気っていうのが多いんだぞ。それも同窓会で再燃したとかがどれだけ多いか・・・。そんな危険な場所に俺の大事な幸樹が参加して、「あの頃、本当は好きだったんだ・・・。」「え?・・・俺も言えなかったけど・・・。」とか言っちゃって、2人でどっか行っちゃって!あ~~そんなの!!許せるわけないだろ!!」
「・・・ね、それ妄想だよね?」
時折、先輩は勝手に暴走してしまうが、今回の暴走は俺も追いつけないほどのスピードで展開されているようだ。
頭を掻きむしり、ワーワー騒いでる先輩に、最初は「そんな訳ない」「ありえない」「俺は裏切ったりしない」「俺が好きなのは先輩だけ」と散々甘い言葉で先輩を諫めていたのだけれど、余りにも激情が収まらない先輩に俺は疲れてきてしまった。
「も~、絶対行くから!止めても無駄!!」
結局堪忍袋の緒が切れた俺が、そう宣言してこの話はおしまい。
ずっとジト目で俺を見ている先輩を無視して、俺は『参加』に丸をつけて明日ポストに投函しようと、返信ハガキをリュックに入れた。
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