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   ──…夏休みを利用して、都会に住む叔父・祐の所へ遊びに来た海斗は、日々の暮しで抱えた『苦しみ』を、祐に告白した。  とつとつと語る海斗の話に根気良く耳を傾け、時に親身な相槌を打ち、海斗の悩みに寄り添ってくれた祐。  話したばかりの時は、 『そうだね』  としか、言ってくれなかったけれど。  その時は言葉を濁していた祐だったが、ちゃんと海斗の悩みを聞き入れてくれていたらしく、『馬車』と例えた黒塗りの車が向かう先に、海斗に対する回答を用意してくれた──らしい。 「シンデレラか、それとも人魚姫になってしまうか、それは全て君次第だ。 いいね?」  困ったことがあるたび、いつもその窮地から救ってくれた祐から視線を外した海斗が頷いて答えると、祐は笑みを消し、二人のやり取りをただ黙って見ていたスーツ姿の男に目配せをした。  すると男は心得たように車のドアを開けると、革張りのシートへ乗り込むよう、海斗を促した。 「さぁ、行っておいで」  肩を抱いた祐に前へ進むよう押し出された海斗は、不安な気持ちを抱えたまま、乗り慣れない車に乗り込んだ。  バタン、とドアを閉められると、途端に心細くなる。  しかし、普段乗り慣れた実家の車より高い天井、車なのにテーブルがあったり小さなシャンデリアがある高級感溢れる内装の珍しさに気をとられた海斗は、キョロキョロとせわしない動きでそれらを眺めた。 (こんな車、乗ったことない)  興味津々で黒革のシートに手をつき、誰の目もないのをいいことに、座る場所を選んだりしていると、コンコン、と外が全く見えないガラス窓をノックする音が聞こえ、慌てて身を寄せた。  これ、どうやって開けるんだろう、と思ったのと同時に窓が開いて驚いていると、眩く感じる明かりを背にした祐と目が合い、破顔する。 '
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