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「祐ちゃん!」
「カイト」
優しい笑みを浮かべている祐の方へ身を寄せると、いつものように額へ口づけを落とされる。
そのこそばゆさに、
「くすくったいよ」
と言って笑っていると、
「いいかい、カイト」
と名前を呼ばれ、顔を上げて祐を見た。
「これから先は、何を聞かれても本当のことを言ってはだめだよ、魔法が解けてしまうからね。 名前も、自分の身の上も、できれば全部、うそをついた方がいい」
「ウソ?」
「そう。 そうしなければ、悪い魔女たちの餌食にされるかもしれない」
「…魔女がいるの?」
「そうだね、魔女よりもっと、質が悪いかもしれないよ?」
「ゆ、祐ちゃーん」
そんなのがいるところに僕一人で行くのいやだ、と泣きべそをかくと、祐は朗らかに笑い、海斗が抱く不安を打ち消そうと優しくその頭を撫でた。
「大丈夫だよ、そうならないようにお願いしてあるから。カイトは何も、心配しなくていい。 だから」
楽しんでおいで、という囁き声と共に祐が車から離れると窓が閉まり、海斗を乗せた車は静かに走り出した。
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