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ひとくちに死んだ、と言っても色々ある。老衰、自殺、他殺、事故…死因も様々だ。
ある町で夕暮れ時に不可解なことが起こった。目撃者の証言によると、彼は飲食店で会計をしようと財布の中身を睨んだ後足りない、と呟いた。それから急に何かに取り憑かれたように一人で怒鳴り始め、まるで踊るようにステップを踏んだ後、倒れたという。
レジにいた店員は様子がおかしいと思い、慌てて救急車と警察を呼んだ。調べたところ彼はすでに亡くなっており、財布には充分な金があった。体には切り傷が一つだけ。真新しいものだったが、大量の出血は見られないことから直接の死因とは考えにくい。解剖しても不振な点は見当たらなかった。それから丁寧に調べたが結局明確な死因は特定できず、不審死として処理された。
たまたま不幸が重なったのだろう、警察はそう判断した。ところがそれ以降、まるで疫病が流行るかのように、じわじわと同じような死に方をする人が出始めた。それは次第に大きな社会問題となり、新しい死因として認められるまでになった。認めざるを得なくなったのだ。その不審死は、怒死と呼ばれた。
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