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はじまり
あるところにそれはそれは見目麗しい男がいました。
男は年頃になると色んなところから求婚され、引く手あまたでした。
男は自分の容姿が優れていることに得意げになり、女性から求められる事が当たり前となり綺麗な女性が求婚に来ても・・・・・・
自分にはもっと素晴らしい女性が合うんじゃないか
もっとお金持ちの女性がいいんじゃないか?
なかなか返事をせずにさらに自分に見合った女性が現れるのを待ちました。
そんな時、一人の魔女が現れます。
彼女は真っ黒なローブを頭から被り、隙間から見えるその紙はシトッと濡れているようでした。
男はその姿を見るなり顔をしかめます。
そしてその魔女の言葉にさらに驚きました。
「私と結婚しなさい」
魔女はニタッと気味悪く笑うとまるで命令するかのように言いました。
男は笑いました。
「は?自分を鏡で見た事はあるか?その容姿で俺と見合うとでも?」
見下すように笑います。
「ふふ、そんな事を言ってもいいのかな?」
魔女はさらに可笑しそうに笑いました。
「もうやめろ、お前と結婚するなんてありえない。その醜い姿を見るのも嫌だ、さっさと帰ってくれ」
「あらそうかい、でもねぇ・・・・・・私あんたの事気に入っちゃったんだよ。私は自分が欲しい物は何としても手に入れるんだよ」
魔女は笑うと一本の紐を取り出しました。
そしてブツブツと何かつぶやくと・・・・・・
「こっちにこい」
男に手招きします。
「はっ!誰が行くか・・・・・・え、嘘だろ?」
男は自分の意志とは逆に足が前へと動き出します、一歩また一歩と。
そして魔女の目の前に立つと、魔女は笑ってその紐を男の首にかけました。
「やめろ!」
男の言葉を無視して魔女は楽しそうに男に紐を巻き付けました。
「ふふ、さぁどんな姿になるかな」
魔女が笑うと男の体はみるみると縮んでいき、体からは真っ黒な毛が生えてきました。
「ああぁぁ!」
男の姿は醜い獣の姿に変えられてしまいました。
「ギャン!ギャン!」
「あはは!醜いねぇ!私と一緒だ!」
魔女は男の姿を見て嬉しそうに小躍りしています。
「いいかい、その姿を戻すにはその姿を好きになってくれる人と両思いになることだ!そんな醜い姿を好きになるのはこの私くらいなもんさ!」
「ギャン!」(誰がなるか!)
「なんとでもいいな、そのうちに泣きながら私に愛してると言いたくなるさ・・・・・・」
魔女は高らかに笑うといつでも待っていると言って男の元を去っていきました。
「ギャーン!」(おい待て、戻せ!)
男は慌てて魔女の後を追いましたがその姿はどこにもありませんでした。
(待て、落ち着け。戻るには俺を好きになってくれる人がいればいいと言ってたな。なら簡単だ!これまで俺に求婚してきた人に頼めばいいんだ)
男はとりあえず一番近い女性に会いに行きました。
「キャン!キャン!」
扉の前で叫んでいると物音に女性が出てきます。
そして獣姿の男を見て悲鳴をあげました!
「きゃー!獣よ!」
急いで扉を閉めます。
「キャン!」(待て!俺だ!)
しかし口からでるのは獣の言葉、彼女には伝わりません。
(くそ!どうしろってんだよ)
「確かに、言葉が通じないのは大変だね・・・」
すると何処からかあの魔女の声がしました。
「おい!出て来い!・・・あっ言葉が」
男は声が戻りました。
これは幸いと男は叫びます!
「ジュリアーナ俺だ!ライスだ!魔女にこんな姿に変えられてしまったんだ!」
「え?ライス・・・」
女性は扉を少し開き外の様子をうかがいました。
そこから見える姿はライスの面影など何処にも無い真っ暗な獣です。
「ひっ!」
女性はその姿をまじまじと見て顔を歪めました。
「ジュリアーナ!こんな容姿だが俺はライスなんだ!君の求婚を受ける!だから俺と結婚しよう!」
「は?今更何を・・・それにそんな醜い姿で私と結婚?絶対に無理です。それにあなたがライスだって確証も無い」
ジュリアーナは不信感からかライスを睨みます。
「私、他に好きな人もいるのでおいとまください」
ジュリアーナは再び扉を閉めるとガチャっと鍵をかけました。
「くそ!なんだあの女!前はニコニコと笑顔を振りまいて媚びへつらってきたのに・・・」
だが大丈夫!俺を好きな女などごまんといる!
ライスは次の女性の元に向かいました。
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