呪い

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呪い

ライスは片っ端から求婚された女性の元に向かいました。 しかし結果は予想通り、ライスに求婚してきた女性はライスの容姿が好きだったのでした。 醜い姿になったライスには興味もありません。 「君が俺を好きになってくれたら俺は元の姿に戻れるんだ!」 ライスはこの姿は一時なんだと説明します。 「無理です、そんな姿を好きになんてなれない。ならもっと他に素敵な男性はいますから」 「なら元の姿に戻ってから来て下さる?」 「私獣の苦手なんで」 「ぎゃー」 中には姿を見るなり叫び声をあげて逃げ出す女性もいました。 「くそ!あいつら本当俺を好きだったのかよ・・・」 ライスはどうしたらいいのかと途方に暮れます、そしてとぼとぼととりあえず家に帰る事にしました。 すると家の前には人が集まり何かしています。 「何してる!」 ライスは人集りに声をかけました。 「ぎゃあ!獣が喋った!」 「化け物!」 人々はライスの姿に驚き逃げ出します! そして、武器を持って戻ってきました。 「殺せ!獣を殺せ!」 「こっちが殺される前に殺すんだ!」 殺気立った人々が目を血走らせて向かってきます! 「ま、待て!俺だ!ライスなんだ!」 「なんか獣が言ってるぞ、ライスだって?その姿で何を言ってるんだ」 「ま、魔女に呪いで姿を変えられて・・・」 ジリジリとにじり寄ってくる人達に思わず後ろに下がる。 「みんな!こんな姿の奴の言うことを信じるのか?もしかしたらこいつがライスを殺したのかもしれないぞ!」 「そんなわけあるか!俺の声がわかるだろ!?」 ライスは叫びます、しかし人達はライスの声などに興味はありませんでした。 「ライスの声?あいつはそんなしゃがれた声なんてしてないさ」 「そうそう、友人の俺ならわかるよ。ライスはもっといい声だ」 あいつら・・・ いつも女を紹介してやったのに、友だと思っていたのは俺だけ・・・いや、俺もあいつらを見下していたのかもしれない。 「ほら!出ていけ!二度とこの町に近づくな!」 人達はライスに向かって石や木の棒を投げつけます。 「ギャン!」 石はライスの頭部を直撃しました。 それでも町の人達の勢いは止まりません、次々に投げられる物が体中に当たります。 「くそぉ・・・」 ライスはそのまま町の外へと逃げ出して行きました。 一人暗い森を彷徨い歩きます。 周りからは何かわからない物音がして、気が休まる暇もありませんでした。 しかし歩き疲れて大木の下でとうとう立ち止まってしまいました。 「もう無理だ・・・」 少し休もうと横になります、体からは町の人達から受けた暴行で血が流れて体中が痛みました。 ライスは気絶するように倒れ込みました。 するとそれを待っていたかのように獣の声が・・・見れば光る瞳がライスを狙っています。 彼らはライスが力尽きるのを待ち後をつけていました。 くそ・・・ ライスはもう声も出ないほど疲労していました。 そして全てを諦めその瞳を閉じたのでした。
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