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「佐藤翔太」と「鈴木亮太」
オレの名は佐藤翔太。
市内でも、ド底辺とかボーダーフリーと呼ばれるギリギリの私大に入学し、1か月が経過した。
親ガチャでハズレを引いたオレは、こんな境遇を抜け出したくて、どうしようもなくて、学校の先生に頭を下げ捲って、スーパーFランクの大学に押し込んでもらったのだ。
むろん、学費は「奨学金」という名の借金だ。借りた金額は384万円だが、なぜか返済金額は432万円になる。利子は年利にして1%と低いが、卒業時点で立派な債務者誕生になる。
親ガチャで当たりを引いていたら、こんな目に遭わずに済むのだろうけど。
そんなオレにも友達ができた。ほぼ同じ境遇の鈴木亮太。
2人して日本人に滅茶苦茶多い名前で、平凡を通り越して空気のような透明な存在だった。
入学時、サークル選びを迷いすぎて、結局、お互いに入り損ねて仕方なくつるむ形になっていた。大学でも負け組への道まっしぐらである。
そんな鈴木が、チキンを嚙み千切りながらぼやいた。
「大学入ったら、何か変わるとでも思ったのかよ、お前」
「多少は」
オレはボソっと言った。鈴木は悪友だが、この親ガチャ負け組の境遇を、諦めて受容し、負け組は負け組らしく卑屈な精神を持っている。
「はぁっ? お前、人生舐めてんの?」
チキンの油が飛び散った。
「いや、別に。舐めてないけど。一応、これで大卒って言う肩書手に入れられる訳だし」
小声でそう答えると、亮太は鼻で笑った。
「甘いよ、大甘だっつーの。オレ達みたいな底辺でも入れる様な大学はな、社会じゃ高卒と同等か、ひょっとしたらそれ以下の存在なんだよ!」
オレは、コイツが何を言っているのか、この時点では理解できなかった。
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