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第一日目
悪魔が立っていた。
常夜灯に照らされ、部屋の窓からちょうど見えるか見えないかぐらいの位置に不気味な微笑みを浮かべて何をするでもなく、ただこちらを見つめていた。
私は最初不審者が庭に入ってきたのかと思い不安になり、観察してみたところ、明らかにそれは人間とは違う生物だった。1メートルも満たないであろう身長に、痩せ細った体は小さな子供を連想させるが「それ」の肌は血のように赤かった。かといってよく絵本で出てくる典型的な悪魔のような角はなく、人間のような頭をしていた。
顔には人間らしいところは一つもなく、白目のない目、顔の半分まで吊り上がった口角、赤なのか黒なのかよく判断がつかない歯、そして蛇のような舌と遠くから見ても硬そうな肌をしていた。
私は幻覚でも見ているのだろう、それかまだ夢でも見ているのだろう。先程寒気がして起きたので、秋の涼しい風でも吸おうと思った結果がこれである。
もう眠り直すことなど出来る訳がない。目の前の光景は夢というにはあまりにも強烈で明瞭だったからだ。
私は心臓の鼓動が早まり、手足が冷たくなっていくのを感じた。バクバクという音が心臓から鼓膜の中まで通じている。目を逸らせば殺される。。そう反射的に考え、私は瞬きすらしないで約100メートル先の生物と見つめあった。
時の流れはこの時永遠を告げたかのように時間は私の中で止まっていた。時計の音と心臓の音だけが部屋中に響いていた。
「・・あ・・・。」
それは動いたかと思うと、住民宅街から夜の街の方向へ消えていった。
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