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side灯
さて、おれも寮に帰りますか。と、思ったその時だった。
おれは大切なことを忘れていたことを思い出した。
「やっべ。葵、放置しちゃってる」
ちょっと待っててどころじゃないくらいの時間は既に過ぎている。急いで寮に帰らなければ。
そうして、ほぼダッシュで戻ってきたが、葵は寮のホールの端っこで電話していた。けど、俺にすぐ気づいて、電話を切ってこちらへ向かってくる。
気づいた瞬間切ったよ、今。いいのか?
「ちょっとあーちゃん、長くない?この葵くんも少し怒っちゃったよ?なんかあったのかと思って心配したじゃん!」
「ごめんな、ちょっと色々あってさ」
「色々って?変なことされた?誰に?」
「いや、変なことされてない。ただ生徒会室の案内されてた」
過保護か、ってつっこみたかったけど、葵の顔がめっちゃ真剣だったからやめといた。その代わりに、さっきまで何やってたかを話す。
「それでね、瀬川先輩の部屋に行くことになったんだよ」
あ、今何時だ?きょろきょろ時計を探して、時間を確認すると、約束の時間まではまだ結構あった。
視線を葵に戻すと、遠くを見ている。どうした、あおい。
「あーちゃん、僕も一緒に行っていい?」
「瀬川先輩部屋?」
「そう。てか、行く。断られても行く」
葵、そんなに猫見たいのか?
まぁ、断る理由ないし、瀬川先輩もオッケーしてくれるでしょ。
「じゃ、一緒に行こー。それまでどうする?あと、30分以上あるけど」
「まずは、連絡先交換。これ最優先」
「そだねー」
ついでに樹の連絡先も教えてもらった。勝手にいいの?って聞いたら、もう了承は取っていたらしかった。
それから、おれの部屋で時間まで過ごすことになった。
「GPSつけたい、まじで」
そんな葵の呟きは、おれに聞こえることはなかった。
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