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「ほら!早く行こうぜ!ひなたが待ってるぞ!」
「だから、行かねぇって言ってんだろが。手ぇ離せ」
「そろそろ素直になれよ!我慢は良くないんだぞ!」
なにこれ。助けるってどうすりゃいいの?
ぼくわからない。騒ぎの中心にいた転校生と長谷部先生まで約2m。そこまで近づいたとき、エレベーターに連れ込まれそうになっていた先生と目があった。
「おい六条、確かお前俺に用事あるって言ってたよな?」
「六条?だれだ、それ!そいつも呼ぶのか⁉︎」
「はー?なに言って…あー、はい、そーですー。ありまくりですねー」
「お前が六条か⁉︎名前はなんていうんだ⁉︎」
「だよな。よしじゃあとりあえず学校戻るぞ」
「おい!無視すんなよ!そういえばお前、食堂で薫と一緒だったよな⁉︎」
「そっすねー。あ、転校生くん、和泉先輩いる」
「え、ほんとか⁉︎」
「じゃ、先生借りるねー」
転校生くんが違う方向を向いた瞬間に、先生が転校生くんの背中側からこちらに回ってきた。なんかごめんね、転校生くん。
「あれ?いないぞ!どこなんだ⁉︎って、おい、どこに行くんだよ⁉︎」
そんな声に背中を向けて、足早に寮から出る。競歩の大会で優勝狙えそうな速さだ。おれに至っては最早走ってるとも言える。
数分そのスピードで進んだから、疲れた。
「せ、せんせー、おれ、もう疲れた」
「ん、あぁ。悪い。もう大丈夫そうだな」
「てか、どこいくんすか?」
「学校だ。さっき言っただろ」
「えー。えぇーー。なんでぇー?」
あれって適当に言っただけじゃなかったの?なにするんだよ。
「お前に生徒会室を案内しようと思ってな。集会の時に言うのを忘れていたのを、さっき思い出したんだよ」
生徒会室?ならもう場所は知っているから、必要ない。よし、帰れるかも。
そういや葵置いてきてるなぁ。どうしよ。
「先生、生徒会室の場所ならもう分かってるんで、大丈夫っすよ」
「そうじゃない。生徒会室の中の案内だ」
おっとー?予想外の答えが返ってきましたねー。
「中?どゆことっすか?」
「資料室、キッチン、個人の仕事部屋兼仮眠室、などなどいろんな設備があるんだよ。それの説明だ」
「えー、それ今日じゃなきゃダメっすかー?」
「今日やっちゃった方が楽なんだよ」
「それ、先生の都合じゃん」
そこで、はたと気づいた。なんで先生が生徒寮にいたんだ?
聞いてみると、
「夕飯の買い出しだよ。スーパーはあそこしかないからな」
「先生料理するんすか。意外ですね」
「別にいいだろ」
「別にいいっすけど」
ならもういいだろ、とその話はそこで終わった。
するとちょうど、昇降口が見えてきたので、先生は教師用、俺は生徒用の下駄箱に行き、靴を履き替えてまた合流した。
それから向かった生徒会室には、おれ以外の生徒会役員の先輩が揃っていた。
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