真・王道転校生

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 「って事で、2日遅れで入学したんすよ」 昨日樹や葵にした説明を先輩方にもする。 先生が出ていってから、かれこれ30分、ずっと質問をさせ続けている。 よくネタ尽きないなと思う。 「そーだったんだねえ。大変だぁ」 瀬川先輩が相変わらずのゆる〜い口調で言う。 その時、神楽先輩の携帯が鳴った。メールが来たらしい。 それを読んでいくうちに神楽先輩の雰囲気がだんだん重くなっていった。 確認し終えたところで、話し出す。 「仕事だ。薫と葉月、夏月は風紀へ向かえ。俺は職員室に行く。湊は灯の案内を頼む」 「了解です。葉月、夏月、行きましょう」 「りょうか〜い」 連絡が来てから1分もたたないうちにみんなが動き出す。 ってあれ?おれ、案内されるだけ?手伝わなくていいのかな? 「灯、今入った仕事は少し面倒事だから、気にするな。湊に案内してもらえ。俺ももう行かないといけない。湊、よろしくな。…あと、ダメだからな?」 「まかせて、ちゃんとやるよ〜。てゆ〜か〜、ダメってかいちょーのってわけじゃないじゃん」 「うるさい。とにかくやめろ。灯、警戒心、大事にしろよ?」 「神楽先輩に言われたくないですけどわかりました」 警戒心大事に、とか言うなら変なことしてくんなよ。という意思を目線に込めたが、神楽先輩は無視して出て行ってしまった。 「じゃ、あーちゃん、いこっか〜」 俺の手を引いて、生徒会室の奥の扉に向かっていく。 ちなみに、扉は他にも4つあった。 「どこいくんですか?」 「あーちゃんのプライベートルーム〜」 がちゃ、のドアを開けると、寮ほどではないがそこそこ大きいベット、勉強机、棚が置いてあった。ほぇ〜、と部屋を見回してベッドにぼすっ、と座る。 ベッドめちゃふかふかだ。 「ここで勉強もできるし、仕事してもいいし、寝てもいいんだよ〜」 「へぇー、すごいっすね。普通に部屋だ」 「でしょでしょ〜?しかもこの部屋、鍵がかけられるんだ〜」 そう言って瀬川先輩は鍵を閉める。 「それなら寝てるとき誰かが入ってくる心配しなくて良さそうですね。神楽先輩とか」 そう苦い顔をして言うおれに、いつの間にか近くに来ていた瀬川先輩はふふ、と笑い、ほっぺを両手で挟んでくる。なんじゃい。 「かいちょーにだけ警戒心剥き出しだねぇ」 先輩の手首を掴んでほっぺから手を離して、当たり前でしょ、と答える。 「初対面でキスしてくる人を警戒しなかったら誰警戒すんですか」 「確かにそ〜だねぇ」 「でしょ?」 この話はもうやめましょ、と言いベッドから立ち上がって部屋をでる。 瀬川先輩もおれに続いて部屋を出てきた。 「あーちゃんさぁ、ねこ好き〜?」 突然の質問にへ?と口を開けぽかんとしてしまう。 そんなおれをふふっ、と笑い、もう一度尋ねてきた。 「だから〜、ねこ、好き〜?」 「猫っすか?好きですけど。…なんでっすか?」 「俺の部屋にね〜、ねこがいるんだけど〜」 「飼ってるんですか?」 「ん〜とねぇ、正確に言えば違うんだけど〜、ざっくり言うとそんな感じ〜」 まじか。 実はおれ、さっきの答えの数万倍は猫が好きなのだ。 大好きだからといって、話題に出ただけではしゃぎまくる、なんて事はしないだけで。内心、うっきうきのわっくわく。部屋呼んでくれたりしないかなぁ。 さすがに烏滸がましい? 「でね〜、提案なんだけど、今夜、俺の部屋来ない〜?」 よっしゃキタァ! 「いいんですか?」 まぁ、表情は涼しげにね。 「もちろん、いいよ〜。ついでにご飯食べてく〜?」 「ほんとっすか?」 料理できんのか、瀬川先輩。 「ほんとほんと。遠慮しないできて欲しいな〜」 そこまで言われちゃ仕方がねぇ。これからお世話になるしな。親睦を深めようではないか。 「じゃ、お邪魔させてもらいます」 瀬川先輩はおれの返事を聞くと、めっちゃ喜び、 「じゃ、夕飯の準備するから先行ってるね〜!」 と言って、先に寮に戻って行った。
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