687人が本棚に入れています
本棚に追加
ピンポーン ガチャ
「あーちゃん、いらっしゃ……なんでいんの?」
おれたちを出迎えたのは笑顔の瀬川先輩…じゃなくて無表情の瀬川先輩だった。
ドアから出てきた瞬間の笑顔どうしたんだよ。
表情筋が仕事してないよ、先輩。
「みっちゃんだけはずるいよ!」
「なんのこと〜?ていうかぁ、人の部屋にこの人数で押しかけるの常識なさ過ぎじゃないー?」
「お前には言われたくねぇ」
「b…会長にも言われたくないなぁ」
「とにかく入ろー!」
「そうだね入ろ!」
「かづとはづが決めないでよー」
と、ごちゃごちゃなりながらも、瀬川先輩の部屋へ入っていく。
あの後、生徒会メンバー全員を誘いにいき、会長と葉月先輩が加わって、なんかお土産買ってこー!と言うことでスーパーで色々買ってから瀬川先輩の部屋まで来た。ちなみに葵は、急に用事が入ったとか言ってどこかへ行ってしまった。
タイミング悪いなぁと思いながら、おれも先輩たちに続こうするが、後ろから腹周りにまわされた腕によって阻止された。
「ねぇ、あーちゃん、俺が呼んだのあーちゃんだけだよね?」
いつもの瀬川先輩の声とは違う、少し掠れた声。
めっちゃ好き…じゃなくて。
「すみません、丁度夏月先輩と廊下で会ってですね…」
「俺、あーちゃんのためだけに準備したのに」
ぼすっ、と顔を肩にうずめてくる先輩。
結構落ち込んでる?なんか他にも嫌なことがあったのかもしれないな。
ま、それが何か、おれには知る由もない。
「じゃあ、今度は2人でご飯食べましょ?瀬川先輩のオムライスって美味いんでしょ?」
だから、こんな提案をしたわけだが、先輩の反応がない。
あれ?図々しかったかな?
「先輩が良ければですけどね?」
「………良いに決まってんじゃん」
「それじゃ、約束ですよ?ねこちゃんも今度来た時は独り占めします」
「……うん。そうだよね、ねこ見せてあげるって言ったもんね」
「はい。もふもふしまくりますからね」
家で買飼ったことないからね。猫とか犬とか。
テレビでしか見たことないんだよなー。
「あーちゃん!みっちゃん!はやく!」
夏月先輩の声が聞こえ、先輩たちが先にリビングに行ったことを思い出す。
「瀬川先輩、急ぎましょ。みんな待ってるっぽいです」
「あーちゃん、瀬川じゃなくてさぁ、湊って呼んでよー」
「それ、今、言います?」
「今思ったからねー」
「わかりました。じゃ、湊先輩、行きましょ」
「うん、いこー」
この数秒後、おれと湊先輩がリビングに入った瞬間、夏月先輩と葉月先輩にスーパーで買ったクラッカーをお見舞いされたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!