蜘蛛の糸

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「ほう。蜘蛛の糸で作った服が。そんなものがあるんですね」  店主がしらばっくれるので 「あるんでしょ! 本当は!」  と太一は大きな声を出してしまった。 「ありますね、本当はね」  店主も同意した。 「しかしあなた、蜘蛛の糸で作った服の効果をご存知なんですか?」 「もちろん!」  太一は語気を強める。それから急に小声で 「つまり、あれでしょ。蜘蛛の糸で作った服を着ると、透明人間になれるんでしょ。蜘蛛の糸で作った服を着た俺は、誰からも見られないんでしょ」  と店主に耳打ちした。店主は頷き、その通りだと言った。 「しかし驚きましたね。そこまでご存知だとは。そして確かにおっしゃる通り、この店には蜘蛛の糸で作られたハイネックのセーターがあります」 「ほら、やっぱりだ! この店には蜘蛛の糸で作られた、え? ハイネックのセーター? があるの?」 「ございます」  店主はにっこりと会釈した。
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