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「わー、すげえ」
「…………」
「ビー玉みてえ」
「…………」
「まじですげえ。なんか、きらきらしてる」
そうつぶやく市ヶ谷くんの目のほうが、きらきらしてる。瞳のなかで、星を育てているみたい。
「きれいだよ、山田さんの目。宇宙みたいで、きれい」
ひまわりが笑ったのかと思った。まぶしくて、目がチカチカする。星がまたたいたのかもしれない。昼なのに。
ありがとう。小さな声で返すので、精いっぱいだった。
「前髪、切りゃあいいのに。隠してるの、もったいねえよ」
「市ヶ谷くんみたいなひとばかりじゃ、な、ないから。怖がるひとも、やっぱり、いっぱいいるし」
いってしまってから、あ、と思う。
せっかく、きれいって。ほめてくれたのに。
案の定、市ヶ谷くんは、そうか、と声のトーンを落とした。
市ヶ谷くんが立ち上がる。心臓が、氷をあてがわれたようにびくつく。
「ま、いろいろあるよな」
「…………」
「でも、おれは怖くねえから」
「え?」
振り向いた市ヶ谷くんは、笑っていた。にっ、て、効果音がつきそう。
「山田さんのことも、目も。おれは、ぜんぜん怖くない」
「…………」
「だから、またな。あ、よかったら今度、漫画も見せて」
じゃあな。
アイスの棒を、ぷらぷら。市ヶ谷くんは颯爽と去っていった。
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