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ぴちゃっ、ぴちゃっ、と、何かが滴る音がする。
そうして、温かい。
「………ん、」
重い瞼を開いてそうして視界に入れた景色に、眠っていた脳は覚醒して驚愕する。
「っ、ちょ、なにっ、」
「あ。起きた?」
「っ、!?」
思わず声を漏らしたら、すぐ後ろから、本当にすぐ後ろから声がして、思わず吐息の触れた耳を押さえて振り返ってしまう。
栗色の髪をした目尻に黒子のある、甘い顔をした人。
水に濡れて色気の漂うその端正な容姿に息を呑みそうになるけれど、この状況に意味が分からなすぎて思わず距離を取ろうとする。
けれど、それはお腹に回されている腕に阻まれた。
「な、んでっ、」
「なーに、今更。何回も一緒にお風呂に入った仲じゃん?」
その言葉に、抵抗しようとしていた力が少し弱まって、思わず問い掛けてしまう。
「そ、うなの?」
「そうそう。」
ゆるりと警戒心を解くような笑みを向けてくるけれど、それでも私は困惑していることに変わりはない。
「泥だらけの君を綺麗にして、毎日お風呂に入れてあげてたんだよ?」
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