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「え、ガチ?」
私のその反応が、嘘だとは思わなかったんだろう。
声色が、驚きの色で染まっていた。
「あー、旭め。想像以上に面倒くさい予感しかないんだけど、これ。」
この人は溜め息を零しながらそう文句を垂らしていて、私はただどうしようもできなく震える事しか出来なかった。
空っぽな私の唯一の手掛かりは、この場所を記された地図だったから。
ここにいけば私のことを何か分かるのかもしれないって、藁にもすがる思いだったけれど、この人の反応からあまりそれは期待出来なさそうで。
もう、分からないことだらけの不安で、震える身体に加えて、涙まで出てきそうになってしまう。
「はいはい、ごめんね、言い方きつかったね。だからそんな顔しないの。」
すると、雑に宥めるようにそう声を掛けてくるその人はしゃがみ込んでいる私の腕を掴んだかと思えばぐいっと引っ張ってきて、私が離した距離を一瞬にして縮めてきた。
簡単に引っ張られた私は、またその人の腕の中に今度は向かい合わせの状態で入ってしまう。
「っ、ゃっ、」
「なんにも分かんないの怖かったでしょ。いいよ、とりあえずここにいて。ちゃんと面倒見てあげるから。」
やましいような思惑はないようで、ただ抱きしめながらぽんぽんと背中を慰めるように軽く撫でてくる。
人のことを揶揄うようなことをしたかと思えば、冷たい顔をしたり、けれど、今度はこうやって私の気持ちに寄り添うような言葉を掛けてくる。
どれが、本当のこの人なの。
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