Ⅵ 探索隊の出発

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 そう……二人は大の男好きなのだ。  二人にとってはこの黄金郷探索も、トレジャーハントならぬメンズハントとなることであろう……。 「静粛にぃーっ! これより、黄金郷探索に向けて副王閣下よりお言葉を賜る!」  そうしてイサベリーナ達がそれぞれに胸をときめかす中、騒然としていた広い中庭に捜索隊・隊長フランデスの声が響き渡る。  そちらに目を向ければ、イサベリーナ達も控える一段高くなった閲兵用ステージの中央に、いつものコンキスタドールのような格好で彼も悠然と立っている。 「皆、此度(こたび)の任務、まことにご苦労である! 伝説に聞く黄金都市の発見は、我らが祖国エルドラニアにますますの発展をもたらし、皇帝カルロマグノ陛下も大いにお喜びになられることであろう! すべては貴殿らの働きにかかっている! 我らが祖国と皇帝陛下の御ため、各々いっそうに励むべし!」  フランデスと入れ替わり、ステージ中央に現れた副王アンルイスは、声高らかにありがたいお言葉を整列する探索隊の者達に向かって語りかける。  その言葉に「オォォォーッ…!」という雄叫びにも似た歓声が広場に湧き起こり、伝説の黄金郷を見つけるなどという夢のようなこの計画に、居並ぶ隊員達の意気込みもすでに充分のようだ。  ちなみに彼ら黄金郷探索隊は、大きくわけて三つの種類の人間で構成されている……。  一番数の多いのは、ヒミーゴに駐留するエルドラニア正規軍から選抜された百人の一般兵である。皆、銀色の胸甲にキャバセットを被り、ハルバート(※槍・斧・槌の合わさった長柄兵器)やマスケット銃で武装するというエルドラニア兵の標準装備だ。  そこにドン・エラクルスら白金の羊角騎士団陸戦隊の30名を合わせ、これが護衛、肉体労働に関わる実働部隊となる。  その他、肝心要(かんじんかなめ)の〝黒い雌鶏〟を携えた育ての親イサベリーナとその侍女達に、水先案内のウラタロ、そして、隊を率いる最高責任者の隊長フランデスら非戦闘員が加わり、探索隊が構成されているという内訳だ。 「──皆、準備は良いな? ……では、いざ参らん! 黄金郷探索隊、出発ぁぁぁぁぁぁーっ!」  畏れ多くも副王から激励のお言葉をもらった後、ステージを降りて自身の馬に乗ったフランデスは、最後の確認をしてから出発の号令をかける。
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