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「……ああ、この運河はヒミーゴの街が築かれるよりもずっと前、まだ〝ティモテ・ツカ・トゥラン〟というアサッテカ帝国の都だった頃に造られたものなんですよ」
イサベリーナの声を拾い、会話の途中ながらもこちらを振り返ると、そんな説明をウラタロがしてくれる。
水先案内ばかりか、観光案内もしてくれるというサービス精神の旺盛さだ。
「まあ、そんな古い時代から! 新天地はまだまだ知らないことばかりですわね!」
ウラタロの説明に、自然の河と見紛うばかりの幅広い運河を改めて眺め、イサベリーナはキラキラとした瞳で感嘆の声をあげる。
アサッテカ帝国……エルドラニアのコンキスタドール、ヘルナンドロス・コルテッロによって滅ぼされた原住民ヒメカ族の王朝で、現在のヒミーゴはその首都〝ティモテ・ツカ・トゥラン〟の上に築かれたものである。
「お嬢さま、そろそろお茶の時間でしたわね。すぐにご用意いたしますわ」
「水辺の景色を眺めながら、優雅にお茶の時間といたしましょう。フランデスさまもお召し上がりになって」
アサッテカの技術力にイサベリーナが感心する傍ら、メイアーとジェイヌはそうことわりを入れて、この舟にだけ備え付けられた携帯炉でお湯を沸かしにかかる。
「まあ! お舟でのお茶会なんてステキですわ! わたくしはレモンティーでお願いいたします」
そんな侍女達の提案に、イサベリーナはますますその顔を輝かせると、これが公的な任務であることもすっかり忘れている様子だ。
こうして、未知の密林を掻き分け、黄金郷探索をするために組織されたフランデスの一行も、しばらくは運河遊覧の旅をゆっくり楽しむのであった──。
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