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1.ゲームスタート
「いっ…ここは……?」
勇気は痛む頭を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
少し薄暗い部屋は、コンクリートで固められた無機質な壁に覆われている。
「は、花子ちゃん……」
勇気は隣で眠る花子を揺さぶり起こす。
「ん……勇気くん…、ここどこ……?」
花子はボケーッとした様子であたりを見回す。
「わからない……。てか花子ちゃん、ヨダレたれてるよ」
「えっ、ウソ。やだやだ」
花子はあわてて手の甲でヨダレを拭う。
よく見てみると、その部屋にあるのは頑丈そうな鉄の扉と、壁に置かれた大きなモニターだけだった。
「なんなの……」
すると、突然モニターの電源が入る。
『ようこそ、私のゲームへ』
画面に映し出されたのは、怪しげなマスクで顔を隠した人物だった。
「な、なんだこれ…」
勇気と花子は画面を注視する。
『私の事はヘンオン、と呼ぶがいい』
「ヘンオン…」
『ククク、驚いているようだな』
「……っ」
『だがこのゲームにおいて動揺は命取りだ』
「な、何が目的なんだ!」
『安心してくれ。私は君たちを殺すつもりはない。ただ、ゲームがしたいだけさ。もちろん勝てば、君たちは生きて無事に帰ることができるだろう』
「ゲームだと!?ふざけるな!!」
「ここから出しなさいよ!」
『簡単さ。各部屋ごとに用意されたゲームに見事勝つことができれば、その鉄の扉が開き、次の部屋に進むことができる』
「…あれ、もしかして僕達の声聞こえてない?」
「えっ、ホント…?」
『ただし、ゲームに勝てなかった場合は君たちの安全は保証できないものとなるだろう』
「聞こえてないみたい」
「うわー、恥ずかしい」
『では、早速ゲームを始めよう……』
「…やるしかないのね」
「やってやる!そして、絶対に生き延びる!」
『では、1つめのゲームだ……』
すると、ヘンオンはなにやらボードを取り出した。
『実在しないのはどれ?お魚漢字クイズ〜〜!!』
「あれ、なんかテンションが想像と違う」
ここに来て、初めて勇気と花子は動揺を隠せない。
『今から私が君たちに4つの漢字を見せる。ただし、その中に一つだけ、私が考えた偽物の漢字がある。君たちはそれを見抜き、見事偽物を見つけ出してみせよ』
「なんか楽しそう」
『ただし。万が一間違えたら、私はこの部屋に3匹くらいゴキブリを放つ』
「いやあああああああああ!!!」
『このゴキブリを君たちの手で始末するまで、この部屋からは出られないだろう』
「……以外と罰ゲームもしょぼい」
「ダメダメダメダメ!!絶対間違えないようにしようね勇気くん!!!」
「えっあぁ、うん……」
『始めようか……!』
「なんというか、字下手じゃない?」
「でも読めなくはない」
「私一番下は知ってる!あれでナマズって読むんだよ」
「うーん、下から2つめはハゼかなぁ……」
「じゃあ残るは2つだけね」
花子は人差し指を顎に当てて考える。
「てか2つめのやつ、明らかにおかしいくない?」
「確かに……なんなの魚屋って……」
「わかったぞ!答えは2番だ!!」
『おめでとう、次の部屋で会おう』
ガチャリと扉の鍵が開く。
「行こう、花子ちゃん」
「うん……」
勇気と花子は、突如として始まってしまったデスゲームに若干の楽しさを覚えつつ、一応空気を読んで厳しめの顔持ちで次の部屋に進むのだった……。
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