1人が本棚に入れています
本棚に追加
9-2.異形
一方その頃、勇気と花子は……。
「やってやった!!ざまあみやがれクソ野郎が!!」
「なあ花子ちゃん……」
勇気は、その名の通り勇気を振り絞って花子に話しかける。
「ん?」
花子は嬉しそうに振り返る。
「やっぱりその……やりすぎなんじゃ」
「そんなことはないよ」
花子はバッサリと言った。
「ヘンオンは……あいつは……」
言おうとしたが、言わずに俯く。
「ヘンオンが?」
「……こうしないといけないの」
場面は戻り……。
廃墟の建物の中。
「ようやく1つめだ……」
ヘンオンは木箱から宝玉を取り出す。
「はぁ、これがあと2つね…」
芽実は両手を膝に付いた。
既にヘンオンは異形の者にお尻をシバかれ、顔は小麦粉まみれ。芽実は激クサタオルで顔を拭かれていた。
「なんなんだよ、あの訳のわからん鬼は……数が多すぎるって」
「ねえ兄ちゃん、外見て」
芽実は窓から目を離すことなく、ヘンオンを呼ぶ。ヘンオンが言われたとおりに窓の外を見ると、そこには驚きの光景が。
「な、なんだよあれ!」
窓からは街の中心部が遠目に見える。そこに佇むのは、あまりにも巨大な異形の鬼。
3階建ての建物を、数え切れない程にびっしりと生えた足で跨いでいくその異形は、さながら巨大なタコといった見た目だった。
「あ、あんなのに捕まったら……」
大きくギョロギョロと周囲を見渡す目と目の間。タコで言う所の腹部に該当する箇所に書かれているのは『昆虫食フルコース』。
「マジ?食えんの!?」
【……え?】
「やったよ兄ちゃん!花子さんからのご褒美だ!!」
【……は?】
ヘンオンと芽実は二人でハイタッチした。
「よし、走るぞ芽実ちゃん!」
「うん!」
【ちょちょちょ待て待て待て待てええ!!】
花子の叫びは二人に届く事なく、虚空へと消えていった。
「手を合わせて」
「いただきます!」
【もう勝手にしろ】
ヘンオンと芽実は次々と虫に手を出していく。
「んん、クセがなくてうまい」
「兄ちゃん、これもイケるよ!」
「お、殻ごとだなんて大人だね~」
【はあぁ~~~~】
花子はこれでもかというくらい大きなため息をついた。
【まさか、大目玉の罰ゲームが罰ゲームにすらならないとは……】
「ごちそうさまでした」
【早っ!!】
ヘンオンと芽実はあっという間にフルコースを平らげる。あまりの早さに流石の巨大なタコもドン引きし、二人から引き下がる。
「……お」
なんと、巨大タコの足元には、2つめの宝玉が。
「ラッキー、2つめだ」
「やったね、あと1つだよ」
「よし、この調子で頑張ろう、芽実ちゃん」
お腹も満たされた二人は、活力を取り戻し廃墟の更なる奥へと進んでいくのだった。
最初のコメントを投稿しよう!