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10-1.歯亡舌存
「いいか、芽実ちゃん。サバイバルに必要な重要な4つの要素。それは、ファイアー、ウォーター、シェルター、フードだ」
ヘンオンは砂浜に木の棒で図を書きながら、芽実に説明する。
「なんか聞いたことあるんだよな、それ。なんだったかなー」
「なんでもいいだろ。事実なんだし」
ヘンオンは周囲を軽く見渡すと、周囲の大まかな地図を地面に書き始める。
「ここが今いる場所だとして……、今は干潮のはずだから、夜にはここは水浸しになる可能性がある」
「ふうん……」
「サバイバルにおいて、まず何より火が一番必要だ。とにかく、安全な場所を見つけて火を起こそう」
ヘンオンはぐっと拳を握る。
2人は安全な場所を求めてジャングルの中を進む。
「足元に特に注意しながら歩くんだ。マムシに噛まれたらひとたまりもない」
「マムシ?こんな離島にいるの?」
「わからないからこそ、常に最新の注意を払うんだ」
ヘンオンは、足元の草木を棒で払いながら進んでいく。
「…ねえ兄ちゃん、あれって」
芽実は脇の地面を指差した。
「……そう、あれがマムシだ。生きている間は絶対に触っちゃダメだぞ」
「言われなくても絶対触んないよ」
ヘンオンと芽実はちょうどよい小川を発見。ここを拠点とする事にした。
「さて、火をおこすぞ~!」
木の棒と木の板、それから細かい枝に枯れ草を用意して、ヘンオンは木の棒を細かくこより始めた。
「わたしはどうすればいいのさ」
芽実は自分の両手をパタパタした。
「そうだな……、食べられそうな物をとにかく集めてきてくれると助かる」
「……わかった」
食料調達を頼まれた芽実は、とりあえず割れやすそうな岩を見つけると、それを地面に叩き付け、かけらの中からナイフとして使えそうな物を拾い出した。
「……さて、どうしたもんか」
食べられるものと食べられないもの。この判断を誤れば、場合によっては死に繋がる。
芽実はある言葉を思い出す。
『己の直感を信じろ』
誰の言葉かなんて知ったこっちゃないが、とにかく芽実はそれっぽいものを集めまくる事にした。
一方その頃……。
「大丈夫なのか……、あの2人」
勇気は花子に心配そうに聞く。
「多分大丈夫よ。あの島、一応毒性のものとかは一切ないように作ったから」
「心配なんだよなぁ~、花子ちゃんのサバイバル、かなりディ○カバリーチャンネルに偏ってるからなぁ~」
勇気は頭を抱える。
「何よ。べ○・グリルスは軍人育ちの1流サバイバーなのよ」
「だからあれはあの人だからできるのであって……」
「で、でもあの2人、余裕で虫とか食べてたし!」
「花子ちゃんが作った島に虫がいるの!?」
「……い、いないけど」
「…だよね」
勇気は不安を顕にする。
「……わかったわよ、少し助ける」
そう言って、花子は手を伸ばした。
場面は戻り……。
「ふぅ、こんなもんかな」
芽実は目の前に広げた木の実を眺め、満足げに額の汗を拭った。
【芽実ちゃん、芽実ちゃん】
突然、花子の声が脳内に響く。
「げ、花子?」
芽実は露骨に嫌そうな顔をした。
【げって何よ。いい、よく聞いて】
芽実は無言で頷いた。
【その中にある木の実、それは全部食べられるわ。でも、それだけだと栄養が偏っちゃう。芽実ちゃんは育ち盛りだから、ちゃんとタンパク質も取らなきゃ】
「ええっ!でも、さっきからこの島全然虫とかいないし……」
花子は一瞬の間を開けて、口笛を吹いた。
【え、え~っと、そういえば最近、この島で釣りをしてたおじさんが海岸沿いに釣具を忘れていったような……】
「ほんと!?ラッキー!!」
芽実は急いで海岸へ向かう。そこには釣具一式と、餌などが入った箱が置かれていた。
「わー、すごい!私魚釣りするの初めて!」
【あちゃ~、片付けるのを忘れていた~。まあいいや、頑張ってね】
「あ、ちょっと!」
花子の声は聞こえなくなった。
「ウッソ……全然使い方わかんないよ……」
芽実の、初めての釣りチャレンジが始まる……!
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