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2.犠牲
同じ様にコンクリートの壁で覆われた無機質な部屋。
その中央には机と椅子が置かれ、机の上にはヘルメットとピコピコハンマーがそれぞれ1つづつ置かれていた。
「これって……」
どこかで見たことあるその組み合わせに、あのゲームを連想せざるを得ない。
『ようこそ、第二の間へ』
再びモニターにヘンオンの姿が映し出される。
『まずはその椅子に対面になるように二人で座るのだ』
勇気と花子は言われるがまま椅子に座る。
「この椅子……ちょっと変だな」
勇気は気付く。普通の折りたたみの椅子に見えるが、クッションの代わりに妙な鉄板のようなものが敷かれている。
『では、ゲームを始めよう。第二の間、反射神経を研ぎ澄ませ!叩いて被ってジャンケンポン対決〜!!』
「まあ、だよね…」
花子は納得したように頷いた。
『ルールは簡単だ。まずお互いにジャンケンをする。ジャンケンに勝ったものは素早くピコピコハンマーを手に取り、相手の頭を叩くのだ。そして、負けた者は素早くヘルメットを被り、相手のピコピコハンマーから身を守るのだ。ヘルメットを被っていない状態の相手の頭をピコピコハンマーで叩けた者が勝利となる』
「わざわざ説明ありがとう」
『そして、負けてしまった者は恐ろしい罰が待っている』
「お、恐ろしい……」
「…罰……?」
ヘンオンは、足元から、椅子に取り付けられた鉄板と同じものを取り出す。
『見えるか?これはお前達の椅子に取り付けられたものと同じ装置だ。まずはこれを見よ』
そう言って、ヘンオンは自分の椅子に鉄板を敷いた。
「あ、あれは……」
『これが、こいつを起動させるスイッチだ。起動すると……こうなる』
ヘンオンは自らそのスイッチを押した。
『いっでぇ!!』
ヘンオンは椅子から飛び上がり、画面の奥で四つん這いになりながら自分のお尻を擦った。
「っ!!」
『こ、これが恐ろしい罰。私特性のお尻ビリビリマシーンだ!!』
「な、なにやってんの……」
花子は呆れた顔をした。
『…思ったより痛いなこれ』
そう言いながらヘンオンは鉄板を仕舞った。
『ククク、私のようになりたくなければ、死に物狂いで勝つのだ!!』
そう言ってモニターの電源が切れた。
「ヘンオン、けっこう体張るね…」
「うくっ、ちょっと面白かった……」
「とりあえず座ろうか」
勇気と花子は互いに椅子に座る。
「この勝負、どちらかが勝ち、どちらかが負けて罰を受けるまで次の部屋には進めない……」
「つまり、どちらかが犠牲にならないと行けないって事ね…」
「すまない、花子ちゃん……」
勇気は深々と頭を下げた。
「……は?なに、私が負けると思ってんの?」
「え」
「私負けないからね。こう見えて結構強いよ」
お互いに構える。
「叩いて被ってジャンケンポン!!」
勝負は一瞬だった。
グーを出して負けた勇気は、焦ってピコピコハンマーを手に取ってしまう。その隙に花子に叩かれた勇気は、うなだれるようにピコピコハンマーを地面に落とした。
「そ、そんな……」
「えっへん」
その瞬間、勇気に罰が下される。
「いって!!!」
勇気は飛び上がり、ヘンオンと同じ様にお尻をさする。
「あはは、ごめんね」
花子は謝りながら立ち上がった。
『よくやった。それでは、次の間の扉を開けよう』
ヘンオンの声とともに、扉からガチャリと鍵の開く音が聞こえた。
「……勇気くん、大丈夫?」
「いって〜…」
勇気はお尻をさすりながら不貞腐れ、花子の声を無視して次の部屋に進んだ。
「ちょっと、何怒ってんの!!」
花子はあわてて後を追うのだった……。
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