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4.疑問
再び無機質な部屋に入ると、部屋の中央にはラップで包まれた調理済のカップ焼きそばと、氷水が入ったピッチャー、それからコップが伏せて置かれていた。
「や、やきそば……?」
「もしかしてこれも……罰なのか…?」
『その通り!!』
突然モニターの電源が入り、ヘンオンの声が響く。
『そこに置いてあるのは激辛やきそばだ。今回のゲームに負けたものは、それを完食するまで扉は開かない』
「な、なんて残酷なんだ……!」
「いや確かにキツイけどさ……」
花子は手前の部屋の事を引きずってか少しノリが悪い。
『早速、第四の間のゲームを説明しよう』
ヘンオンは少しためる。
『己の感覚を信じろ!!ロシアン寿司対決〜!!』
「ロシアン寿司だと……!?」
「辛いのと辛いのの連続じゃん…さいてー」
すると、手前の部屋から、先程の少女が寿司の桶を持ってやってきた。
「あ、さっきの……」
「…………クソガキ」
花子は露骨に嫌な顔をする。
『その少女の持っている桶の中に、マグロの寿司が4つ入ってるな?』
少女が桶を二人に差し出す。
『その中にひとつだけ、大量のわさびが入ったハズレの寿司がある。お前達はこれからジャンケンで順番を決め、一つづつ寿司を食べてもらう。そして、ハズレの寿司を食べた者が罰を受けるのだ』
「……ほんっとさいてー」
「……」
勇気は願った。できれば自分がハズレを食べて、花子の機嫌を取り戻したい。
『では、二人で順番を決めるジャンケンをせよ!!』
「じゃーんけーん」
ぽん。花子がチョキで、勇気がグー。
「私からね」
花子は少女の持つ桶から寿司を一つ取り、口に運ぶ。
「……おいしい!!」
思わず花子に笑みが溢れる。
『その寿司は贅沢に大間のクロマグロを使用している。当たりを引いたなら、その旨さを思う存分堪能せよ』
ヘンオンは得意げに言う。
「次は俺か…」
勇気は別の寿司を取る。
「……うわ、うんまっ…!」
勇気は鼻息を荒らげる。
「うそ……2分の1になっちゃった」
花子はまじまじと寿司を見つめる。
『贅沢にネタを分厚くしているからいくら見てもわからないぞ!』
花子は迷った。
「う〜ん、う〜んと……」
内心焦っているのは勇気の方だったが、運命は時に無情。
「じゃあ…、これ」
そう言って花子が手に取った寿司は、僅かにわさびが端に付いていたのだ。
「あっ……」
止めようとしたが、既に寿司は花子の口の中。
「……………!!!!」
花子は口を手で押さえる。
「んんんんん!!!」
花子の顔は既に真っ赤に染まり、目には涙を浮かべる。あわてて少女がコップに水を入れ花子に手渡すと、花子は寿司を流し込むように水を豪快に飲んだ。
「……わさびの直後に激辛やきそば……なんて残酷な罰なんだ…!」
花子はため息をついてドカッと椅子に座った。
「……食べればいいんでしょ」
花子は橋で焼きそばをつまみ上げ、豪快に啜った。
「……どう?辛い……?」
「…以外とだいじょ…………っっ!!!!」
花子は勢い良く立ち上がり、机をバンバン叩いて悶えた。
「あああああああああ!!!!!」
「は、花子ちゃん!!」
花子は地面に座り込み、足をバタバタと地面に打ち付け苦しんでいる。
「むりむりむりむりむりむり」
そして、再び水を飲み干す。
「ほんと辛い!!勇気くんあと食べて!!」
「えっ……」
突然、勇気の目の前に差し出された激辛やきそば。
『いや、いいよもう。後は俺が食べるから……』
ヘンオンが言うと、カチリと扉の鍵が開く音がした。
「すいません…残しちゃって」
『大丈夫。俺も食べたとき辛くてしんどかったから』
勇気と花子は、意を決して次の部屋の扉を開いたのだった……。
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