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5.邂逅
「もしかしてあなた達もヘンオンに連れられて……?」
そう言って勇気と花子に近付いてきたのは、全く面識のない男女のペア。
「ああ。あんたらもか?」
勇気はそれっぽい雰囲気を出すために、無理した口調で喋る。
「ええ。私達もいつの間にかここに……」
『ククク、揃ったようだな』
モニターの電源が入り、またしてもヘンオンが話し始めた。
『今回、4人が集まってもらったのは他でもない。ここ、第五の間では4人にゲームをしてもらう』
「よ、4人で……」
「一体なにを…!」
『お前達には、生き残りをかけたゲームをしてもらう』
ヘンオンは笑いながら言った。
「な、なんだって!?」
「生き残り……?」
4人はそれぞれ驚きの声を上げる。
『そうだ』
「い、一体なにを……!」
『第五の間のゲームはこれだ…』
その場にいた全員が固唾をのむ。
『誰よりも早くゴールしろ!罰ゲームすごろく〜!!』
「す、すごろく…!?」
『そうだ。まずはお前達、相手のペアと初対面の挨拶をするのだ』
改めて相手の男女を見た。
「私、明子っていいます」
おしとやかそうな女の子だ。
「それで、隣にいるのが…」
「……涼也」
涼也はそっぽを向いてボソッと言った。
「俺は勇気っていいます」
「花子です。よろしくお願いします」
『よし、自己紹介は済んだな。では、改めてルール説明を行う』
すると、突然床に穴が空き、下からアタッシュケースが現れた。
『では明子よ。そのスーツケースを開けるのだ』
「わー、なんだろう」
中に入っていたのは、サイコロが2つと、青、赤のコマ、それからすごろくのボードだ。
『そのサイコロは1~3の数字がかかれた特殊なサイコロだ。そして、そのすごろくには各マスに罰ゲームが書かれている』
「ば、罰ゲームだって!?」
『そうだ。止まるマスによっては、お前達の命も危ういかもしれないな。コマは各ペアで一つ。二人で2つのサイコロを同時に投げ、その合計の数だけ先に進む事ができるぞ』
「二人で協力しないといけないってわけだな」
『そうだ。順番は、明子がケースを開けてくれたから、先に明子涼也ペアからサイコロを振っていいぞ。では、ゲームスタートだ』
ヘンオンの合図と共にゲームが始まる。
「じゃあ、私達から行きますね」
そう言って、明子と涼也はそれぞれサイコロを投げた。
「1と3で、合計4。幸先がいいね!」
「……フン」
涼也はそっぽを向いたままだが、明子がコマを進めた。
「えーっと、『それぞれ一つモノマネをする』……?」
『さあ、明子、涼也よ。モノマネをするのだ』
ヘンオンが高らかに叫ぶ。
「……興味ないね」
「黙れ小僧!」
あまりクオリティは高くないが、花子と勇気はその感想をグッとこらえる。
『…あー、いいだろう。では次、勇気花子ペアだ!』
勇気と花子は意を決してサイコロを振った。
「2と3で…合計5!!」
「なっ、何ぃ!?」
花子は意気揚々とコマを進める。
「……お、お互いの好きな所を5個ずつ言う…だって」
「え……?」
そこからの戦いは熾烈を極めた。
両者ともに1歩も譲らず、着々とコマを勧めていく。
時に「超臭いスプレー」や「コオロギ饅頭」「ビリビリペン」など、過酷な罰ゲームもあった。
それらを乗り越え、最後にゴールにたどり着いたのは……?
「あがり……です!!」
「フン、当然だ」
明子、涼也ペアだった。
「な……そんな……」
「う、うそ……やだ…」
勇気と花子は絶望のあまりその場に崩れ落ちた。
『見事だったな』
ヘンオンがそう言うと、次の扉からガチャリと鍵の開く音が聞こえた。
『明子、涼也ペアは次の部屋に進むのだ』
「……ごめんなさい」
「フン」
そう言って、二人は次の部屋に進んで行った。
「へ、ヘンオン……俺達はどうなるんだ…?」
勇気は震える声でヘンオンに問いかける。
『どうもこうも、君たちはここで終わりだ』
「お、終わり……まさか!!」
『そう。この物語はここで終了だ』
「嫌だ!ふざけないでよ!!」
花子が声を荒らげる。
「前作もそうだったけど、終わり方が雑なのよ!!」
「そうだぞ!なんだ、またネタ切れか!?」
『やめろ!それ以上煽るな!』
ヘンオンが珍しく大きな声を出すので、勇気と花子は静かになった。
『ネタ切れじゃない!他にも色々……いろんなゲームを考えた!トントン相撲とかあっち向いてホイとか……アビリティじゃんけんっていうオリジナルのじゃんけんなんかも考えたんだ!!』
「そ、それじゃ…」
『この作品のタイトルを見てみろ!!』
勇気と花子はこの作品のタイトルを思い出した。
「で、デスゲーム……」
『そうだ!!流行りに便乗してつけたタイトルだ!!デスゲームってのはな!だるまさんが転んだをやって失敗したら人が死んだり……過酷な試練に失敗したら死んだり……とにかく沢山の人が次々に死んでいくのがデスゲームなんだ!!』
ヘンオンは悔しそうに机を叩く。
「へ、ヘンオン…」
『でもこの作品では……誰も死なない!!そりゃそうだよ!これコメディなんだから!全年齢対象だから!!』
「や、やめろ!それ以上いうと……」
『……』
ヘンオンは鼻をすすり始めた。
「…わかったわ」
花子が決心したように言った。
「確かに、これ以上擦り続けてもダラダラしちゃうよね」
『は、花子……わかってくれるか』
「確かに私達はゲームに負けた。でも、当然ゲームに勝った二人がいるじゃない」
ヘンオンと勇気は驚いたように花子を見た。
「は、花子ちゃん!?」
『ま、まさか……』
こうして、勇気と花子の物語は幕を下ろしたのだった。
…まだ続くよ。
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