聖騎士 ルキウス・アンナエウス

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一人になって、集中を始める。 まずは視覚を遮るために目を閉じる。 右耳に魔力を集中すると、キィンというひどい耳鳴りと頭痛が襲ってきた。 耳に埋め込まれたカフの振動子が、そこに刻まれた術式を起動したのだ。 痛みが薄れると同時に大量のデータが頭に直接流れ込む。 作戦行動補助データ共有システム アレスはこの痛みさえなければとても優秀だ。 今日の戦闘員は計10人、推定戦闘範囲における対応人数としては最大になる。 「気合い入れろ」 自分自身に呟き、ゆっくりと目を開けると目の前に広がる荒野の風景に重なるように座標のグリッド表示とそこに居るはずの10人の位置、それぞれが誰なのかがマークされている。 そして、本日のゲストの反応が刻々と近づいてきていた。 『レイ・エルシア大尉です。これよりシールドを展開します』 これから戦場になる場所で待機する仲間達にアレスを通して宣言する。 私の能力は障壁(シールド)だ。 戦場の兵士達の攻撃を妨げることなく、彼らを護る、これが私の仕事。 中、遠距離攻撃をする者には広めのシールドで手厚く。 接近戦をする者には動きの邪魔になることのないようになるべく体に沿った形で。 事前にしっかりとシュミレーションする必要がある。 自分の部隊員である3人の動きはわかりきっている。 残りの内4人は過去に同じ戦場で戦ったことがあるので把握済みだ。 問題は後の3人、2人は新兵なので戦闘データが少なくて動きが読みづらい。 残る一人はデータ量は膨大なのだが能力の相性が悪そうなのだ。 空間跳躍、それがその人物の能力。 出現地点の把握ができるか否か未知数だ。 ただ重量型のメイスを振り下ろす攻撃スタイルなので、基本的にはビーストの直上あたりだと予測される。 残る問題は速さ、残り9人に気を配りながら私の対応が追いつけるかどうか。 「ラウンズか……どんだけ速いんだろ」 我々紅騎士団の中でも特に能力と戦闘力を認められた12人の聖騎士 ラウンズ。そこに席を置くほどとなると……厄介かもしれない。
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