2015年8月 頼人

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◇ ◇ ◇ 「父さん、ちょっと寄るとこあるから」  地元じゃないから一人は危険だと言う父を“社会勉強”の一言でねじ伏せて早々に別行動に移る。雲一つない空からは太陽が容赦なく照りつける。蝉の声、無風のアスファルトから立ち上る陽炎に景色も心も揺れる。 「サンタはどこだよ」  少し歩いただけでも汗が噴き出す。これでもまだマシなんだよな…  そういえば父が誰へともなくボヤいていた。俺の夏休みはこんなに暑くなかった、と。確かにそうなんだろう。父はその理由を地球温暖化が進んでいるからとニュースから得た情報で結論づけた。うん、たぶん間違いではない。  でも研究者は現代(いま)ある材料から見て結論を導き出す。つまり後世で別の理由が見つかる可能性も秘めているということだ。歴史が覆ることなんてよくある話だし、未知(ゼロ)から組み立て、まして想像することなんて誰にもできない。それができるのは“知った”人だけ…  
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