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◇ ◇ ◇
「今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづの事につかひけり…ーー」
懐かしいな、なんて思っていながら広い校内をぼんやり眺めていたら授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。やっと終わった。嫌いじゃないけど好きでもないんだよな、国語。筆者の気持ちなんて特にどうでもいい。
「今日はここまで。来週、追試付き小テストするからな」
「えー!!」
生徒からの間髪入れずの大ブーイングに先生は片手をあげて応える。
「大丈夫!授業聞いてたらわかるから。80点以下は放課後再試ね」
「だから“えー”って言うてんの!」
「ホント素直だね、きみたちは。じゃあ竹取物語の暗唱とどっちがいいかな?」
小学校の時にもやったでしょ?と先生。
確かに無意味に唱えさせられ、一人ずつ暗唱テストまでさせられた。
「究極の二択やん!」
「じゃあお任せでいいね」
先生は意に介さず、むしろ満足そうな笑みを浮かべ、教室から出て行く。その足元には真っ直ぐに引かれた線を跨ぐようにして左右均等に足跡が残る。
実直な性格…
小テストをするマメな先生はモチベーションお高めの生徒思いの良い先生が多いといわれる。でもここまで裏表のない、わかりやすい人も珍しいかも。だからといって納得いくわけがない青春真っ盛りの俺たち。いつしかブーイングは悲鳴に変わっていた。
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