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過去と未来
山上君の教育係になってから1ヶ月が経った。
有名大学卒業の肩書は伊達じゃなくて、彼は要領が良く呑み込みも早いから私が教えられる事がもうほとんど無いほどに優秀だ。
「山上君は本当に優秀だね。私ではもう教えられる事が無いくらいだよ。」
「いえ。篠崎さんの教え方が上手いからですよ。篠崎さんって本当に真面目で頑張り屋ですよね。仕事にそれが出てますよ。」
「あ、、、ありがとう。」
仕事の事を褒められたのなんていつぶりだろう?
出来なくて指摘される事はあっても褒めてくれる人なんてなかなかいない。会社なんてそんなものだろうって思っていたから何だか不思議な気分。
「篠崎さん、俺、篠崎さんの事を前から知ってたんです。」
「え、、、?」
課長から紹介された日に聞いた言葉はやっぱり気のせいなんかじゃなかったんだ。
「前から知っている」一体いつから?
「入社する前から。」
意外な言葉に呆気にとられてしまった。私には全く心当たりが無いし彼の言葉の意図が分からない。
だけど、、、彼の真っ直ぐなその眼差しに私は目を反らせずにいた。
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