2 氷の女王

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「帰りましょう。足元、お気をつけください」 「ええ」  差し出される手を、彼女は握り締める。 「不思議です」  星と月明かりの眩い帰路につくと、彼は本当に不思議そうな声を出した。 「お嬢様……リタさんが望んでくださるなら、人間として生まれ変わりたいと、思うのです。僕が「思う」というのも、おかしな話ですけれど」 「……いいえ。おかしくなんかないわ。私もそう思うもの。あなたが人間になれたら、どれだけいいかしら」  氷の女王が氷を溶かし、ただ一人のか弱い少女として在ることのできる場所。年相応の笑顔を浮かべ、心から言葉を紡げる唯一の居場所。握る手に赤い血が通っていれば。これ以上の喜びはない。 「けれど、言ったでしょう。そうでなくとも、私はあなたが好きよ」 「僕などには、勿体無いお言葉です」 「シュナだから言っているの。ほかの誰でもない、あなたに」  一人と一体は、顔を見合わせて静かに笑った。波音が遠くなり、星が流れる、美しい夜だった。
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