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3 重なる指先
青く晴れた休日の街は賑やかで、多くの人が行き交っている。大通りを眺めながら、ある喫茶店のテラス席でリタはサンドイッチを食む。同じテーブルにはいつもの通り、シュナがついている。
「あなたも、サンドイッチぐらい食べられたらいいのに」
「故障の原因になります。僕にはこちらで十分です」
そう言って彼は、小皿に数個乗せられたキャンディーに似た粒を手に取り、口に運んで笑う。赤色のそれは、彼らをまるで人間のように扱う人間のために作られた、擬似食料だ。自分だけ食事を摂ることに居心地の悪さを感じる人々は、食事の間、よく自分のロボットにそれを食べさせる。緊急のエネルギー源ともなるそれは、口内で溶解し体内で分解され、塵も残さず活動エネルギーの源に変えられる。
「それなら、私がそれを食べたらどうなるのかしら」
「毒にはなりませんが、お勧めはできません」
他愛ない話をし、彼らは立ち上がった。陽射しは暖かく、陽気がうららかに人々を包んでいる。
「少々お待ちください。食器を片付けてまいります」
「ええ。ありがとう」
「すぐ戻りますので、ここを離れないでいてください」
「わかってるわ。子どもじゃないんだから」
では、と彼は盆を手に足早に店内へ向かう。その背を見送って、リタはテラスの段から歩道へと足を下ろした。ほんの悪戯心。彼が探し始めたら、すぐに目の前に飛び出すつもりだ。彼は驚いて、それからほっとして笑うだろう。その顔を見たい。
人々の雑踏に紛れて、店を振り返って。
後ろからリタは肩を掴まれた。
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