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雌雄を決する 2/10
「あん? なんだよ、長良。お前には関係ないだろ?」
長良、というのが僕の名前だ。
「関係なくはないよ。僕だって保坂ユキさんのクラスメイトなんだ」
「俺は保坂ユキの彼氏なんだぜ? 二人の会話に首を突っ込んでくるなんて野暮なことするなよ」
「彼氏だからって無制限に怒鳴っていいわけじゃない」
「怒鳴ってなんかいないさ。ゲームが上手くなるコツを教えてやっただけだ。だよな、ユキ?」
いきなり返事を求められた保坂ユキはオロオロしながら頷いた。
「えっ? う、うん? そ、そうだね。あっくんがそう言うってことはそうなんだね」
僕はため息をついた。心の中ではなく、実際に。
保坂ユキはかわいい。おしとやかで、物腰が柔らか、笑顔も朗らかだ。ちょっと天然も入ってる。長所を挙げたら切りがない。
ただし、主体性がない。主張が強い相手には流されてしまう。そもそも安藤と付き合っているのも、交際をゴリ押しされて断りきれなかったからだ。そして別れられないでいるのも。
でもこのまま放っておくのは僕にはもうできなかった。
「安藤。勝負をしよう」
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