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雌雄を決する 5/10
このゲームは通常、装備を固めてから戦うのがセオリーだ。しかし僕は敢えて定石から外れ、最低限の武器だけ拾って速攻を仕掛けた。スピードに全振りした戦略だ。
「はあっ? もう現れただと!?」
僕は安藤の不意を突いて一歩的に攻撃を叩き込んだ。ほとんど反撃させる余地もなく、早々に一勝目を上げた。
「こんな邪道な戦い方ありかよ! 卑怯だろ!」
「邪道でも卑怯でも何もないよ。ルールの範疇だし、戦略の一つだ。そうやって自分の弱さを人のせいにするのは悪い癖だよ」
「くそッ!」
安藤は激しく机を叩いた。周りにギャラリーがいなければ、ゲームではなくリアルで攻撃してきそうだった。
二戦目に突入した。
安藤は一戦目の僕を真似して速攻を仕掛けてきた。
僕はそれを予想していた。あらかじめ自陣から少し外れたところに移動し、有利な立地で迎え撃った。
戦略は上手くハマり、またしても安藤を一気に追い詰めた。
あと一発か二発の攻撃で勝敗は決するかに見えた。
ところが安藤は僕の見積もりよりも一回り実力が上だった。
最後の一撃が当たらず、焦った僕は逆に隙を突かれ、形勢逆転を許してしまった。
勝てると思っていた試合を落としてしまい、一勝一敗に並んだ。
「フン。お前の戦法はもう見抜いた。次で終わりだぜ」
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