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久美さんの奏でる音色に、体の芯から温められる。
「どうでした?」
「いや、どうって言われてもその曲知らねぇし」
「『オーバーザレインボー』。こんな有名な曲を知らないとは!」
「『オーバーザレインボー』? で、何でいきなり楽器?」
「サックスに向かって息を吹き込めば、感情がむき出しでも素敵な音色に包まれて相手の耳や体に響くので、相手に不快な思いをさせずに感情を吐き出すことができます。さあ、テナーサックスに思いっきり感情をぶつけるのです!」
テナーサックスを充希君の手に押しつける。困惑した様子の充希君は、ぎこちなくテナーサックスを鷲掴みにしていた。
「これ、俺でも吹けるんすか?」
「やってみれば分かりますよ」
「先生が口付けたのに?」
「拭けば大丈夫です、ほら!」
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