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それからほぼ毎日、放課後になると久美さんは充希君のいる屋上へ上がってテナーサックスの練習に付き合いだした。
始めは音を鳴らすので精一杯だったが、徐々に音に抑揚がつき、やがて充希君の感情がのった色っぽい音色を奏で始めた。
「すごいです! 聞き惚れちゃいました」
「マジで? って、何で泣いてんの」
「だって……こんなに上達するとは思わなくて……!」
「大袈裟っすよ」
「いえ、大袈裟では、ありましぇんっ!」
「先生」
「何でしょう?」
「泣き顔、ブサイクっすねー」
「なっ!」
充希君は、ケラケラ、と楽しそうに笑っている。
充希君は久美さんをいじるのが面白いらしい。片眉をつりあげながら揶揄って、その反応を見て楽しんでいる。
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