#5 ジャズバンド

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 それからほぼ毎日、放課後になると久美さんは充希君のいる屋上へ上がってテナーサックスの練習に付き合いだした。  始めは音を鳴らすので精一杯だったが、徐々に音に抑揚がつき、やがて充希君の感情がのった色っぽい音色を奏で始めた。 「すごいです! 聞き惚れちゃいました」 「マジで? って、何で泣いてんの」 「だって……こんなに上達するとは思わなくて……!」 「大袈裟っすよ」 「いえ、大袈裟では、ありましぇんっ!」 「先生」 「何でしょう?」 「泣き顔、ブサイクっすねー」 「なっ!」  充希君は、ケラケラ、と楽しそうに笑っている。  充希君は久美さんをいじるのが面白いらしい。片眉をつりあげながら揶揄って、その反応を見て楽しんでいる。
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