#5 ジャズバンド

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「待って、先生。話題についていけてないの、俺だけ?」  いまいち状況が分かっていない充希君が訊ねてきた。 「もうひとり来たら、教えますね」  閉められたドアを叩く音と共に「失礼します」という礼儀正しい男性の声がした。  静かに開けられたドアの向こう、きっちりと制服を着こなし、爽やかな短い黒髪の長身の男子生徒が現れた。  その男子生徒は、充希君を見つけると「お、来たねー?」とにっこり微笑んだ。確か敬さんと充希君は中学からの仲だったと聞いた。 「これは何事? 教えろよ、敬」  敬さんはにこにこしている。その笑顔の裏に闇など感じない。敬さんの代わりに、久美さんが説明を始めた。 「敬君はバンドのリーダーをしてもらってるから、何か分からないことがあれば——」 「バンド? リーダー?」
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