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テナーサックスを吹いていた人と同一視できないほど、感情のこもっていない抑揚のない声が聞こえてくる。ぼそぼそというよりは、割とはっきりとした声音には、やや刺々しい。
「どうも……?」
返事に困って発した言葉は、返されることもなく闇に溶けていく。男は進行方向に向き直るとさっさと去ってしまった。
「ふぅー……殺されるかと思った……」
その背中を見送りながら、恐怖からなのか私の心臓は音を立てて高鳴り続けていた。
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