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海沿いの道路を、一台のオープンカーが映画のワンシーンのように、純白のウェディングドレスとタキシードに身を包んだ二人を乗せて走って行く。
「なぁ、龍司。こうやって後ろに俺達が乗ってるのって、やっぱりおかしかないか?
普通、花婿と花嫁の二人だけでスタートライン切るもんだろ……。
俺達まで拍手で見送られて、すごく気まずかったぞ」
後部座席に座って居心地悪そうな卓也が、運転席でハンドルを握る龍司に声をかける。
隣で苦笑している妻の千晶の膝の上には、卓也の初出版作品が大切に握られていた。
「いいんだよ。俺は家族に支えられて始めたいんだ。だから、もう一度、父さんと母さんと兄貴が集まる機会を作りたかった。
沙織もそうした方がいいって言ってくれたんだ」
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