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だから、これから父を病院から連れ出し、母の墓前に連れて行く。 あの頃、確かに家族だった両親と兄弟の全員が揃い、そこに卓也と龍司の伴侶を加え、気持ちを新たにこれからの人生を始めたかった。 この先、父が自分達のことを思い出してくれる可能性は、もうないのかも知れない。 それでも、自分達が笑ってさえいれば、幸せな想いだけは伝わるだろう……。 助手席に座った沙織が、風になびく前髪を押さえながら笑顔を浮かべる。 沙織の髪の上に飾った純白のベールが、風に舞い、雲の白と混ざり合うように揺れている。 やがて車は、海沿いの道を外れ、新緑の眩しい木々に囲まれた坂道を、力強く登って行った。            ――fine―― (次ページに『あとがき』書きました。 どうかご覧下さい)
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