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ヤクザ、売り専、絶倫
彼は決まって月の綺麗な深夜にやって来る。
身綺麗にけれども不穏な空気は隠しきれず、抱き締めると硝煙と血の匂いがした。
月がすっかり姿を隠すまで苛まれると、その日は家に帰れないほど疲れてしまう。
ひとり目覚めるホテルの部屋、テーブルの上には過分な対価。
それだけしか残らない部屋。
シャワーも浴びずになだれ込んだ、ベッドシーツに彼の残り香だけある。
何も知らない。だけど、誰よりも彼の事を知っていると思う。
薄く消えてしまいそうな香りを吸い込むと、鈍く胸が痛んだ。
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