一ノ巻

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一ノ巻

「花模様が出るとはめでたいなぁ。これは龍神様に気に入って貰えるかもしれん」 ''花模様''とは、首から鎖骨に向けて出る痣の様なものである。桜の花弁が散りばめられた様で一見綺麗だが、これは「供物」の中でも特級品と言われるくらい貴重らしい。青葉家で生まれる子供には、この様に呪いの象徴が現れる事がある。 過去に、花模様を持つ者は人成らざる者を招く魅惑の香りがすると聞いた事がある。ここ迄長々と述べてきたが、金色の瞳に花模様と特級品である僕にとっては、見ての通り何もめでたい事なんて無いのだ。それなのに今、目の前の人達は心から幸せそうに笑って言うのだ。 「めでたい…ですか」 独り言の様に呟くと、老人の女が自分の頭に綿帽子を被せながら「そりゃあもう」と心底安堵した様に言う。「貴方のお陰で、青葉家の命は助かるんだ」なんて言っているが、遠回しに僕は死んでも構わないと言っているのと変わらないと気付いていないのだろうか。
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