一ノ巻

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この、先祖代々続いている「供物」を捧げる儀式は何百年も前から受け継がれてきたモノである。ひょんな事で青葉家の先祖が罪を犯し、その際に龍神と契約を交わしたらしい。一般的な青葉家の子供は金色の瞳を持って生まれてくるのが特徴である。珍しいモノが好きな龍神は、命を救う代わりに「金色の瞳を持つ者が18になったら必ず捧げよ」と命を出したらしい。 (つまりこの人達の為に死になさいという事か) 今になって、昔僕を産んだ母親が何故泣いていたのか分かった気がする。 母親がどうして僕を突き放したのか。 何故あの日必死な表情で僕を川に捨てたのか。 しかし、流される直前に人が駆けつけて来て僕を助けた。そして、事の発端が知られてしまった母親は僕の目が届かない所で始末されてしまった。あまりにも残虐的だ。 愛の言葉一つ捧げられなかったが、母親はきちんと僕を愛していたからこそ守ってくれようとしたのだろうと思った。それなのにあの時の自分は涙一つ溢れる事は無かった。 嫁入り駕籠に入れられた僕は揺らされながら小さな窓から外を見る。 幼い頃から遊んでいた見覚えのある山だ。僕の入った駕籠を抱えて周りに立つ数人の者達は鳴らしていた鈴の音色を止めたと同時に足も止めた。瞬間、目の前の光景がブれて、何も無かったその先に階段が現れた。先の見えない闇に包まれた階段を中から見据えながら、僕は小さく息を呑んだ。
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