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ー今から半年前ー
俺は、短距離走を得意とする陸上選手。今年で二十四歳になる。
今年こそはと、四年間いっときも休むことなく練習してきた。娯楽や、旅行、彼女も作らず、ただひたすら走り続ける生活を送ってきた。
だけど、現実はそんなに甘くはない。今年もオリンピック代表に、惜しくも選ばれなかった。
代表どころか、俺より早い奴らが何人もいる。少しも惜しくないのだ。
代表にはなれなくても、代表選手の練習相手として選手村で共に生活をしている俺。
これでいいのか? まだ努力が足らないのか? 代表になれる奴と何が違うんだ。もっと早くなりたい。誰よりも早く走りたい。
そんなことを常々思う俺は、努力しても報われないイタイ奴になっていることに、薄々気付いていた。
今年は、二〇六四年のオリンピックだ。昨日で全ての競技が無事に終わった。そして今朝から行われている閉会式が、次第に終わりへと近付く。
「今年もリレーは盛り上がったな。また四年後を目指して頑張ろうかな……」
俺はつくづく諦めが悪い。本当は実力が無いことを、そろそろ認めるべきなのではないのか。頭の片隅で、そう思う自分がいることには気付いていた。
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