思い出す温もり

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思い出す温もり

「っ、はあ…!言うことを聞くか、ナンネ!!」 「っあ…はあっ、はあっ…『嫌です…!!』」  すると彼は自らのもたげる熱に私の顔を押し付け言い放つ。 「まずは口からだ!生意気なメイドに言うことを聞けるようにしてやる!口を開けろ!!」 「っ、んむっ…!!」  彼自身の熱を私が口に含むと彼は私の顔を強く押さえつけ、自分の良いように動かし始めた。 「あぁ…」  彼は恍惚の笑みを浮かべた。  苦しい。  私は息も出来ずになされるがまま。  しばらく続けられ、ようやく解放された私は激しく肩で息をすることしか出来ない。 「っはあっ、はあっ、はあっ…」 「さぁナンネ、言うことを聞く気には…なっていないようだな…!」  彼は言うとすかさず、先ほど私の口にねじ込んだ自らの猛る熱を私の奥に突き入れる。 「っああ…!!」 「サキュバスに言うことを聞かせるのなら、これが一番だからな!!さあ!ナンネ!!」 「っ、やあっっ!!」  彼から与えられ続ける律動に、台詞も、呼吸すらも追いつかない。  強く片腕で抱き締められ、たまに胸がつぶれるほど強く揉み込まれながら。  感じたくない。  今までそんなことも考える暇もないほど、誰かにそばにいてもらうことだけを考えて逢瀬を過ごしてきた。  それなのに… 「っ!!っあぁっ!!」 「いきたいか、ナンネ!?」  彼は私を揺さぶったまま尋ねる。 「っ…!!」  感じたくないと思っていても、揺さぶられるまま無理矢理昂ぶらされた身体を止められず、私は何度も頷いた。  しかし彼は突然、律動をやめる。 「!?」 「そう簡単にすると思ったか!?サキュバスの餌はまだお預けだ!私の仕置きが先だからな!!」 「そ、んな…っ」  昂ぶった私の熱は収まらない。  離された身体に喪失感すら覚える。 「…ナンネ?私の言うことを、聞くのか…?」  睨むように私の顔をじっと見られた。  …そう、彼は私のお客様…  私に自由は無い。どんなことをされても、意に沿わなければ… 「…『嫌ですっ!!どんなに抱かれようと、旦那様の言うことは聞きませんわ!』」  私は冷たく言い放った。  とたん再び彼の熱が私を貫く。 「んっやあぁぁっ!!」 「お前が、気を失おうとも、止めはしないぞ!!今宵は、私のメイドだ…!!」  何度も何度も繰り返し押し寄せては、弾ける前に引かされていく快感の波に、私は疲れ果てていった。  それでも彼は言葉通り、ベッドに横たわりそうになる私を休ませず、彼の望む限りの逢瀬は続けられた。  感じたくない…  優しく抱き締められたい…  誰に…?  あの感覚は…あの優しい声は… 「っト…さ、ま……」  思わず口を突いて出る、儚い私の呟き。 「何か言ったか!?」  お客様はベッドに倒れ込んだままの私を抱き起こしながら、まだ余裕を無くしたまま尋ねた。 「…!『いいえ…!』」  あの方を思い出しただけで、この場から逃げ出したくなった。  この場にいるはずのない、いてくれるはずのない、あの優しい方…  私が最初の望みに添えなくても喜んでくれた、私を受け入れ、包み込んでくれたあの方…  私がこのまま命を落としたら、ティト様は悲しんでくれるだろうか?  そんなことまで考えてしまう…
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