謎の霧と助けの魔女

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謎の霧と助けの魔女

 突然、私の周りに薄い霧が現れた。  苦しくはない。むしろ落ち着いた気分になるような優しいものだった。  私の身体だけをゆっくりと取り巻き、優しく包むように…  すると私は押さえつけられた身体が苦しみから解放されたように感じ、私自身の存在が許されたような気すらした。  そして… 「ナンネ…!?何してるのよ、あんたたち!」  聞き覚えのある声がする。  彼らは私から完全に手を離し、声がする方に顔を向けた。 「っ…外れ森の魔女だ…!!」  獣人の彼女の仲間が怯えたように声を上げる。  声の主は町外れの店の魔女ダリアだった。 「私の友達に、一体何をしてくれてるの!?」  彼女はそう叫ぶと私に駆け寄り、私をそっと抱き起こしてくれた。 「…ダリア…」 「ナンネ、大丈夫…?」  彼女は本当に心配そうに声を掛けてくれた。 「…はい…ありがとう…」  私が返事をすると彼女は無事を確かめて頷き、周りにいた人たちに向かって言った。 「…私は魔女だよ?寄ってたかって私の友達に痛い目みせようっていうなら、私は黙っていない」  彼女は赤い瞳を光らせながら、さらに周りを睨みつけて凄む。 「そりゃあ、使う必要がなくなった強魔力が錆び付いた私は、いつもは簡易魔法や魔法薬を使うくらいさ。でもまだ、魔物たちを召喚することくらいは出来るんだ。そんなにしたければ私の大事な友達の代わりに、理性も無い魔物たちにあんたたちの相手をさせようか…?その命尽きるまで、激しく可愛がってくれるかもね…!!」  彼女の言葉を聞いたその人たちは悔しげに顔を歪め、早足に散っていった。 「…。」  皆いなくなり二人きりになると、ダリアは私のそばにそっと座って言った。 「…『恐れられる』ってのも、たまには便利だね。魔族の召喚魔法はこの国じゃ禁止だよ。…怖がらずにうちに来てくれる常連のナンネに、あいつらは…!!」 「…ダリア…」  さすがに泣きそうになる私を、彼女は悲しげな顔で見つめて言う。 「…なんで無理をしたの…なんで泣き叫ばないの…?怖かったんでしょう??まだあんたは、自分には気持ちがないなんて思っているの…?私は…あんたが嬲り殺されるなんて嫌だよ…」 「…。」  胸がズキリと痛み、私は何も言えなくなってしまった。  いつも笑って迎えてくれるダリアが、私をそんなふうに思ってくれていたなんて知らなかったから…
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