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◆ 6 ◆ エピローグ
窓の外からは、今にも祭りが始まろうかといわんばかりに、にぎやかな音楽が聞こえてくる。
庭のジャスミンの花が風に揺られている様子もまるでも音楽に合わせ踊っているようだ。
もうすぐ花祭りが始まる。毎年開会式には四天王・朱雀があいさつを行うのが習わしだ。
公務の準備を終え、ふと、窓から空を見上げた。空は今日も快晴だった。
――昔より色が濃く感じるのは、この空から、君が見てくれているからだろうか……
男は愛しそうに空を見つめている。
心の中で静かに、最愛の女性に対して語りかけた。
――今はまだ無理だけど、いつか、会いに行くよ。そのときはゆっくり話そう。
……君がいなくなってから、本当に色々なことがあったんだ。
子どもたちも大きくなった。その分私も、老けてしまったけど…こんな私でも素敵だと、きっと君なら笑って言ってくれるんだろう。
「……シエル。行ってくるよ」
そうつぶやいて微笑む目尻には小さくしわが刻まれ、苦労も年齢も感じさせる。しかしその優しい表情はいくつになっても変わっていなかった。
男はマントを身に着けると屋敷を後にした。
甘い花の香りをその身に纏って。
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――行ってらっしゃい。雲雀。
《The End》
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