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出会い
――ユトピア歴976年(現在から24年前)
「雲雀さまっ!! こんにちは!」
「こんにちは」
「今年の花祭りもすばらしいですね!」
「本当に。みなさんも楽しんでくださいね」
雲雀と呼ばれたその青年が微笑むと、女性たちは照れながら会釈し通り過ぎていった。
雲雀にとって、街中で声をかけられることは珍しいことではない。肩まで伸ばした燃えるような赤髪に優しさのにじみ出た顔つき。美男子であることに間違いないが、彼が有名なのには別の理由がある。
この国、『叡智国家・朱雀』は雲雀の祖先が築き、代々守り栄えてきた。
安定した治安と年中穏やかなその気候、土地柄により、人々が集まり、今では世界で二番目に大きな国へと発展した。
国王はこの世界の四天王としても名を馳せる地位にあるが、国柄同様に穏やかな性格の王が多い。
城を構えることを好まず、首都・コンニトスの一角に屋敷を置き国民の近くにあろうと努めてきた。
雲雀は現四天王・朱雀の長男であり、自分の父、祖父、先祖同様、国民に寄り添うその穏やかな性格と人柄の良さから、国中の人に慕われてきた。
街を歩けば、それが雲雀であると知らぬ人はいないのである。
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